短歌のはなし

短歌が好きなのです,という話.

 

短歌といえばどんな歌を思い浮かべますか.

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

                俵万智 歌集サラダ記念日 

 これが有名かな.あとは百人一種の和歌も馴染み深いですよね.

 

わたしは結構現代の和歌が好きで.

ことばの選び方,リズム,切り取られたさりげない風景や感情.日本語はなんて美しくて面白いんだろうと思う.

今日は,わたしが好きな現代の歌人,お三方を紹介します.

 

俵万智さん

冒頭のサラダ記念日がとても有名.でももちろん他にもあるんだよ.

カニサラダのアスパラガスをよけていることも今夜の発見である

これなんて,一見ふつうの文だけどちゃんと三十一文字だしリズムも完璧.そしてアスパラをよけている相手への愛も感じる.ごはんのとき,相手のことを見ているかどうかって無意識の愛情な気がします.

 

まちちゃんと我を呼ぶとき青年のその一瞬のためらいが好き 

 恋の歌だと,この歌も良いなあと思う.なんていうか,こういうところにときめくんだよね.始まったばっかりのどきどきとか,いろいろ含んでる.

 

短歌は性質上,恋愛の歌が多いとは思うんだけど,その中でも屈指の恋愛短歌を詠むと個人的に思っている方がこちら.

 

加藤千恵さん

この人の『ハッピーアイスクリーム』という歌集をよんだとき,心に刺さりすぎて,紙に書き写したという思い出があります.*1

真実やそうじゃないことなんだっていいから君と話がしたい 

 まっすぐで切ない感じのする歌.ハッピーアイスクリームは17歳のときのデビュー作ということもあってか,こちらも心を削られるような感覚になるけれど,自分のなかの十代の頃の気持ちを取り出したいときによみます.

 

そして三人目はこちら.

 

穂村弘さん

この方は見てる世界が違うんじゃないかっていう,不思議な歌人さんだと思っている.

わたしとしては,歌もさることながら,その世界の捉え方が魅力的で,エッセイや歌論が好きです.

エッセイだと『にょっ記』『整形前夜』,角谷光代さんとの共著『異性』とか好き.

 

だけどいちばんここで話したいのは,『短歌ください』というシリーズです.

これはちょっと変わってて.雑誌ダ・ヴィンチの読者投稿企画に寄せられた,一般の方々が詠んだ短歌を穂村さんが講評する,というもの.

まずその短歌が素晴らしい.日常に寄り添った歌,自由なことば,そして本当にさまざまな世界の切り取り方があって,とても面白いのです.

 

そこに穂村さんがコメントを入れているのですが,これも素敵で.

彼の想像している,三十一文字に収まりきらない世界が鮮やかでちょっと不思議.

すごく読みやすくもあるので,是非よんでもらいたい.

 

 

短歌が好き,という話はあんまりしたことがなくて.

生活していても短歌に触れる機会は少ないと思うけれど,これをきっかけに歌集というものを手にとってもらえたらなと,僭越ながら思います.

 

 

*1:この紙を探したのですが見当たらず…